訛り

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animal_yopparai_buta.png無性に独りになりたくなって(いつも独りだが)、当てもなく飲みに行った。

初めの居酒屋では友人と行った時には美味しく感じられた地元産の食材を使ったご当地料理も、醒めていたその時にはご当地の人間の口に合うレベルにはとうてい至らなかった。あの時は飲むことに意識が向いて何を食べているのかもわからないまま食べていたんだろう。


一瞬残念に思ったが、観光客向けに似て異なる名物料理風を提供する店があるということはなんだかちゃっかりと観光地しているじゃないか、と一周回って頼もしく思った。店は旅行客や外国人で賑わっていた。

その後、いつも行く店に向かったがあいにく休みだった。帰りたくなかったので、知らないバーに飛び込んだ。サーファー風の若い男性が一人でカウンターにいる店で、サーフボードが壁に飾ってあるところをみるとサーファーなんだな、と思った。

客は自分の他に女性2人組がいた。こちらはサーファーではなさそうだが、片方の女性が店の人と知り合いらしく共通の友人の結婚の話をしていた。

ジントニックとソルティドッグを飲んだ。異様に酔いが回りここがどこだがわからなくなって自分は今出張で来てるのか、と勘違いしそうになったが店の人と客の女性の会話から聞こえる独特の訛りで意識がなんとか繋ぎとめられた。

書いていて思い出したが、大学の頃に友人と居酒屋のカウンターで話し込んでいた時に、突然隣の初老の男性に失礼ですがひょっとするとおたくは〇〇市の出身ですか、と尋ねられた。

その時の友人は関東の出身でこちらもプレーンな標準語を話していたつもりであったが、ところどころに独特の訛りが表出してそこに反応されたのだと思う。

正確には自分はその近隣の出身だったものの、その男性は嬉しそうに実は私は△△市の出身で就職列車でこちらまで出てきて今に至り嫁はこちらで知り合ったがたまたま同じ県の出身で働きに来ていて今は子供が独立していて家は夫婦2人になっているなどと、語った。地元には数十年帰っていないという。

自分はもし遠く離れた街で独りで飲んだ時に僅かな訛りを数十年のブランクがあったとしてもそれを感知できるだろうか。

おそらく酔っ払っていてわけもわからないことをまくしたて、何言ってんだコイツみたいな顔をされるのが関の山だろう。