AI(1)

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IMG_3996.jpg六本木ヒルズで開催されたAIのイベントを聴講した。

マイクロソフトやソニー、NTTドコモ、サイバーエージェントのAI業務に関わる専門家が登壇し、今後のサービス展開や研究が発表された。

現時点でAIに任せられるのは、領域特化型のタスクに限定され精度も100%ではない。このことはどの登壇者も共通して語っていたことだ。ただ、その性能は指数関数的に伸びており、人間が行うことをほぼAIで置き換えることが可能になる日は近いという。

その後の懇談会で、とある人から銀行に努める女性がRPA(Robotic Process Automation)の導入で自分の仕事が完全にAIに取って代わられて途方に暮れていた、と聞いた。その人が解雇されたわけではないが、人が必要でなくなってきている顕著な例である。

人材不足である業種においてAIが導入されることは理にかなっているが、人件費削減が目的のAI導入には一定の規制が必要ではないか、と思っている。

企業には製品やサービスを提供するだけでなく、雇用を通して社会的責務を果たす役割がある。広く考えると従業員も消費者だからだ。従業員を解雇し、人件費を削減することは自社の利益にはなるかもしれないが、どの企業も同様の対応を取り始めるとどうなるか。あまねくAIが導入され、人手がいらなくなった社会では職を求めようにもハイスキルが要求される専門職しかなく、その技術はすぐに習得できるものではない。やがて安定した雇用と賃金を得られる者が少なくなり、消費が落ち込むだけでなく、社会全体の低迷に繋がっていく。

人件費削減で一時的には業績は好調になるかもしれないが、社会全体の消費が落ち込んだ影響はかならず巡ってくる。

こういった流れは自分が勝手に想像しているのではなく、マーティン・フォード著「テクノロジーが雇用の75%を奪う」に詳しく述べてある。対応策についても具体的に述べてあり、経済学のみならず、人の生きがいやモチベーションにも言及する社会学的にも良書である。

企業はまず生存のために自己利益の最大化を目的とするのは当然なので、全体をコントロールする国の役割が重要になるだろう。

懇親会ではAIに関わる仕事をしている人ばかりだったので(自分はほぼ部外者に近い立ち位置だった。いろんな話が聞けたので面白かったが)上記のような意見を開陳すると「宇宙の話のような壮大なテーマですね!」と一笑に付されて、そういえばこの人達はAIで飯を食っているのだと気づいて反省することしきりであった。